ユルハの杜 はすの花と こどものひみつ
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第一章 あの夏の日
あの池には、毎年夏になると、ふしぎなはすの花が咲いた。
水のうえに浮かぶ大きな葉、そのうえで、小さな生きものたちが遊んでいるのを、
だれも信じてくれなかった。
でも、ぼくは知っている。
あの日――
風がやさしく吹いて、陽ざしが金色にゆれていた午後。
ぼくは一人、池のほとりにしゃがみ込んで、水面にそっと耳をかたむけた。
「ぷくぷく…」
水の中から、あわの音と、かすかな声がした。
第二章 泡のなかの妖精たち
泡のなかには、ちいさな妖精がすんでいた。
ピンクの妖精はシャボン玉を吹き、
白い妖精は葉っぱのベッドでぐっすり眠る。
黒い影のような妖精もいたけれど、
それはきっと、ぼくの「くろい気持ち」を映していたんだと思う。
でも、
花が咲くとき、どの妖精もわらった。
あたたかくて、ひかりに満ちていた。
第三章 帰り道のはなし
「またあそびにおいでね」
ぼくが帰ろうとしたとき、
ピンクの花の真ん中で、まんまるの顔がにっこりと笑った。
風にゆられるハスの葉の音が、
まるで、ぼくの名前をよんでいるみたいだった。
それはずっと忘れていた――
でも、いまでも心のどこかに残っている、
小さな夏の魔法の思い出。
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